「別れの季節」後編 父がくれた愛
投稿日: 投稿者:祈り百貨店
第三章 お別れの日
葬儀当日、朝の光が静かに差し込む中、私は重い心を抱えながら母と妹と一緒に葬儀場に向かう準備をしていた。父との最後の別れの日が、現実として目の前に迫っている。母は静かに涙を拭い、私たち姉妹の手をしっかりと握っている。その優しい手の温もりが、少しだけ心を落ち着かせてくれた。
葬儀場に到着すると、静かな空気に包まれた。父の棺が安らかに横たわり、周囲には彼を偲ぶ多くの友人や親戚が集まっていた。私の心は、悲しみと感謝が交錯し、言葉にすることができないほどの感情が渦巻いていた。
母は、父の棺の前で泣き崩れていた。彼女の声が震え、心の底からの悲しみが溢れ出す。私は思わず母の肩を抱きしめ、「大丈夫、私たちが一緒にいるから」と声をかけた。母の目を見つめると、彼女の中にも父への愛が深く刻まれていることを感じた。
葬儀が始まると、父の友人や親戚からの言葉が続いた。彼らは父の思い出を語り、彼がどれほど愛されていたのかを教えてくれた。私は、父がどれだけ多くの人に影響を与え、愛を与えていたのかを改めて知り、胸が熱くなった。
その後、お花入れの時間が訪れた。私たち姉妹は、父が好きだった向日葵を手に取り、棺の前にそっと置いた。向日葵は、父の明るい笑顔を思い起こさせる花だった。妹が「パパ、いつも私たちを見守っていてね」と呟くと、私も心の中で同じ思いを抱いた。父の存在を感じながら、彼のために精一杯の愛を贈る瞬間だった。
そして、その時に流れたのは、父が愛してやまなかったビートルズの曲だった。音楽が流れる中、私たちは涙を流しながらも、父との思い出を思い起こしていた。彼が私たちに与えてくれた幸せな瞬間が、今も私たちの心の中で生き続けている。
葬儀の後、親戚や友人たちと一緒に父の思い出を語り合う時間が続いた。彼の若かりし頃の姿や、家族旅行の楽しいエピソードが語られる中、私たち姉妹は笑い合うこともできた。父の存在は、決して消えない。彼の思い出は、私たちの中で永遠に生き続けるのだと確信した。
その日、私たちは父との別れを乗り越え、彼が残してくれた愛を胸に抱いて新たな一歩を踏み出す準備を整えた。父が教えてくれた大切なこと、そして家族の絆を感じながら、これからの人生を共に歩んでいく決意を固めた。私たちは、父の愛を大切に育てていくのだ。
第四章 草葉の陰
葬儀が終わり、私たちは火葬場からの帰宅の道をゆっくりと進んでいた。車の中は静まり返り、何かを失った悲しみが重くのしかかる。しかし、同時に、それぞれの心の中には父との思い出が静かに息づいていた。妹は窓の外を見つめ、私もまた、思い出の中に浸っていた。
途中、私たちは父がよく腰掛けていた公園に立ち寄ることにした。緑豊かな公園は、父が私たちを遊ばせていた場所であり、家族の思い出が詰まった場所だった。公園に着くと、私は一瞬足が止まった。そこには、父がいつも座っていたベンチが静かに佇んでいる。その姿を見ると、まるで父がそこにいるかのように感じた。
妹と一緒にそのベンチに腰掛けると、周りの景色が目に映る。父と一緒に遊んだ日、笑い声を響かせた日々が鮮明に思い出される。私たちは、父が教えてくれた遊びや、彼が語ってくれた物語を思い返しながら、心の中で父に語りかけた。「パパ、ここにいるよね?」と。
その瞬間、思い出の中の父の笑顔が浮かび上がる。彼の穏やかな眼差し、優しい声、そして私たちを包み込む愛。父は、私たちの心の中に生き続けている。私たち姉妹は、父の思い出を胸に抱きながら、これからの人生を歩んでいくことを決意した。
公園を後にし、家に帰る道中、私は母の横顔を見つめた。彼女は、父の思い出を大切にしながら、私たち姉妹を支え続けてくれる存在だ。母の強さを感じながら、私たちは家族の絆を再確認する。父が私たちに残してくれた愛を、これからも大切に育てていこうと心に誓った。
家に戻ると、父の写真が飾られたリビングが私たちを迎え入れる。そこには、父の笑顔があり、私たちを見守っているように感じた。私たちは、父のために向日葵の種を植えることにした。庭に新たな命を育てることで、父との絆を繋ぎ続けることができる。
そして、向日葵が咲く頃、私たちは父の思い出を語り合いながら、彼の存在を感じることができるだろう。父は、私たちの心に永遠に生き続け、どんな時でも私たちを見守ってくれるに違いない。
家族との別れは悲しいが、その中には愛があふれている。私たちは父の愛を引き継ぎ、これからも支え合いながら生きていく。そして、父が私たちに教えてくれたことを胸に、未来へと歩みを進めていく。
別れの季節は、私たちに新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれた。父との思い出は、これからの人生の支えとなり、私たちを強くしてくれる。私たちは、愛する父の教えを胸に、これからも共に歩んでいくのだ。
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