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愛する夫との別れは、私にとって人生で最も大きな試練でした。55歳で商社に勤める夫がガンを宣告された時、私たちの生活は一変しました。私は50歳でネット通販会社の経理を自宅で行っており、夫の闘病を支えることができる環境にいたことは幸いでした。

出会い~結婚生活

彼との出会いは、私の人生の中で最も幸運な瞬間の一つです。大学時代、友人の紹介で出会った彼は、明るくて優しい笑顔を持つ人でした。初めて会った時、彼が話す言葉の一つ一つに引き込まれ、気がつけば彼の虜になっていました。交際が始まってからは、私たちは多くの楽しい思い出を作りました。特に、毎年の夏に訪れる海辺のキャンプは私たちの恒例行事でした。波の音を聴きながら、星空を見上げて語り合った夜は、今でも心に残っています。

結婚してからの生活は、幸せに満ちたものでした。お互いの仕事を尊重し合い、支え合う関係を築いてきました。夫が商社での仕事に忙しい時、私は家事を手伝い、彼が帰るのを待つことが日常でした。彼の帰りを待ちながら、私は夕食を準備するのが楽しみでした。食卓を囲んで交わす会話の中で、私たちの絆は深まっていったのです。

 

突然の余命宣告

しかし、夫がガンと診断された時、私たちの幸せな日々は脆くも崩れ去りました。医者から余命を告げられた時、私は言葉を失いました。彼がどれほどの痛みを抱えているのか、どれほどの恐怖を感じているのかを思うと、心が張り裂けそうでした。それでも、私は彼を支えるためにできる限りのことをしようと決意しました。

終末医療

彼の闘病生活は、喜びと悲しみが交錯するものでした。治療に通う日々は、時には希望をもたらし、時には絶望を感じさせました。彼が治療を受けている間、私は彼のそばで励まし続けました。病院でのエピソードも多く、彼が治療を受けるたびに私が感じた不安や、医者とのコミュニケーションにおける苦労もありました。特に、彼が化学療法を受けた後の副作用に苦しんでいる姿を見るのは、私にとってとても辛いものでした。彼が少しでも楽になるように、私は料理やケアに全力を尽くしました。

やがて、彼は山梨の終末医療施設に入院することになりました。自然に囲まれた環境で、彼は穏やかに過ごしていましたが、私は不安でいっぱいでした。彼を自宅に帰してあげたいという思いが強くなり、葬儀社に相談することにしました。最初は山梨の葬儀社に依頼しましたが、都内の自宅で見送ることに対する強い思いから、家族葬専門の業者にも相談しました。

逝去~自宅へ帰る

彼が自宅に戻った日、私は彼をリビングのソファに安置しました。長い闘病の末に痩せ細った彼の姿は、私の心を切なくしました。彼の顔は安らかで、静かに横たわっている姿を見ていると、私の中に彼との思い出が溢れてきました。彼と一緒に過ごした日々、笑い合った瞬間、そして愛し合った時間が、私の心を満たしていきました。

翌日、彼は葬儀社の家族葬専用式場に搬送されました。式までの間、面会専用の安置室で彼と過ごす時間が与えられました。その時、私は彼に最後の別れを告げるための時間を持つことができました。彼との思い出を語り、感謝の気持ちを伝え、涙を流しながら彼を偲びました。

お別れ会と葬儀

葬儀の準備は、私の親族を中心に進めました。夫の身寄りは少なかったため、私の家族が大きな支えとなりました。札幌に住む親族の僧侶に仏式の葬儀をお願いし、私は彼が愛した人々に囲まれて彼を見送ることができるように、準備を進めました。最初は20~30人の参列を予定していましたが、彼の訃報が広がると、多くの友人や同僚が面会を希望しました。

通夜は最初の予定を大きく上回る多くの参列者が集まり、無宗教のお別れ会スタイルに変更しました。彼との思い出を語る言葉や、彼が生前にどれほど多くの人に愛されていたかを知ることができ、私は心が温かくなりました。彼がどれほどの信頼を集めていたのか、そして彼の人柄がどれほどの影響を与えていたのかを実感しました。

納骨~手元供養

告別式も無事に行われ、親族や友人、会社関係者の代表者のみが参列し、静かに彼を送り出しました。火葬場で遺骨の一部を分骨し、自宅には小さな骨壺に収めて飾りました。残りの遺骨は、札幌の実家の菩提寺に納めることにし、四十九日の法要も無事に終えることができました。

こころの癒し~祈りと思い出~

葬儀の後、私は彼を偲ぶために、自宅のリビングに家具調の仏壇と仏具を揃えました。これにより、彼の存在を日々感じることができ、私の心の支えとなっています。彼がいなくなった今も、私の心には彼の笑顔がいつもあります。彼との思い出が私の生きる力になり、悲しみの中にも前に進む勇気を与えてくれます。

夫との別れは辛いものでしたが、それ以上に彼と共に過ごした時間の大切さを改めて感じることができました。これからも、彼の思いを胸に刻みながら、彼に恥じない人生を歩んでいこうと心に誓っています。私の心の中には、彼との数々の思い出がまだ生き続けています。

彼の好きだった音楽を聴いたり、二人で訪れた場所を思い出したりするたびに、彼の存在を感じることができます。私は、彼が私の心の中で生き続けていることを信じています。そして、彼が望んでいたように、前向きに生きていくことが、私にとっての最大の供養だと思っています。これからの人生も、彼との思い出を胸に、彼の愛を感じながら歩んでいきたいと強く願っています。彼との別れは私にとっての試練でしたが、それを乗り越えた先には、彼との愛の深まりが待っているのだと信じています。

私たちの愛は、決して消えることのないものであり、彼との思い出が私の人生の支えとなり、これからも私を導いてくれるでしょう。彼のためにも、私はこれからの人生を大切に生きていくつもりです。彼との別れを経て、私は新たな一歩を踏み出す準備ができています。

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