神式のお葬式 特徴や参列マナー
投稿日: 投稿者:祈り百貨店
日本で多くの方がなじみ深い宗教といえば、仏教と神道です。お葬式においては、そのほとんどが仏式で行われていますが、一部では神道式のお葬式、いわゆる「神葬祭」で行うケースもあります。
神式のお葬式に参加したことのない多くの方にとって、その作法や儀式の流れに不安を感じることもあるでしょう。そこでこの記事では、神式のお葬式の特徴や参列マナーについて詳しくご説明します。
神道とはどのような宗教?
神道は、日本古来の宗教で、特定の経典や教祖を持ちません。八百万の神々を信仰し、自然や祖霊を崇拝します。普段わたしたちが目にする神社が、まさに神道を象徴する場所です。
みなさんもきっと、いろんな機会に神社に足を運んだことがあると思います。初詣、お宮参り、七五三、結婚式など。しかし、お葬式となると、仏教のお坊さんがその役割を務めることがほとんどです。日本の葬儀の宗教の比率は、仏式が約8割であるのに対し、神式は約1割だと言われています。
神道では、故人はカミになる
神道では、亡くなった人は「祖霊」となり、家族や子孫を守る存在となります。そして時間をかけて山や森などの自然に還り、そして地域全体の「氏神」として祀られます。
神道のお葬式はその出発点とも言えるもので、故人さまを家の守護神とするために行われます。葬儀を通じて故人さまの魂を鎮め、長い年月をかけて神様として迎えていくのです。
神式と仏式の違い
神式の葬儀には仏式とは異なり、いくつか独特の作法があります。仏式と比較しながら、神式の特徴を見ていきましょう。
- 諡号(しごう):
神式では、仏式の戒名にあたるものを「諡号(しごう)」と呼びます。仏式の戒名は、僧侶が故人の生前の業績や人柄に応じて授けますが、諡号は性別や年齢に応じて定められており、生前の名前に続けて与えられます。 たとえば、日本太郎さんという男性が亡くなった際には「日本太郎大人命(うじのみこと)」、日本花子さんという女性であれば「日本花子刀自命(とじのみこと)」といった具合です。 - 玉串奉奠(たまぐしほうてん)):
神葬祭では、焼香の代わりに「玉串奉奠」を行います。玉串とは榊の枝に紙垂(しで)を付けたもので、神前に奉納して祈りを捧げます。 - 二礼二拍手一礼としのび手:
玉串奉奠の際には「二礼二拍手一礼」という作法を行います。これ自体は葬儀に関わらず神道の祭礼共通の作法ですが、葬儀では拍手の音を立てない「しのび手」が基本です。 - 祖霊舎(それいしゃ):
神葬祭の後、故人を祀るために自宅に設置されるのが「祖霊舎」です。仏教の仏壇にあたるもので、神棚と区別して設けられます。 - 奥津城(おくつき):
神道のお墓は「奥津城」と呼ばれ、墓石の頭頂部が尖った「兜巾型(ときんがた)」が特徴です。この尖りは三種の神器の一つ「天叢雲剣(あまのむらくもつるぎ)」を模したものと言われています。 - 霊祭(れいさい)・式年祭(しきねんさい):
葬儀のあとに定期的に親族が集まり、故人さまを偲ぶのは仏教も神道も同じです。
神道の法事は仏教と日の区切り方が異なります。翌日祭、十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭、百日祭(ひゃくにちさい)までを「霊祭」と呼びます。五十日祭が仏教における四十九日に該当し、忌明けの区切りとなる儀式です。
それ以降のことを「式年祭」と呼び、一年祭、三年祭、五年祭、十年祭、二十年祭、三十年祭、四十年祭と続き、五十年祭で弔い上げとなります。
神式の葬儀の流れ
神式の葬儀は、主に宮司が進行し、神職や参列者が故人の魂を慰めます。ここでは、神式の葬儀の流れを簡単に紹介します。
- 帰幽報告(きゆうほうこく):
故人が亡くなったことを氏神さまや自宅の神棚に報告します。 - 神棚封じ:
神道では、死を穢れと考えるため、神棚や祖霊舎を封じ、五十日祭までそのままにしておきます。 - 通夜祭・遷霊祭(つやさい・せんれいさい):
仏教における通夜式のことです。神道の通夜祭では、故人の御霊を慰め、遷霊祭では故人の御霊を「霊璽(れいじ)」という白木の板に移します。 この儀式は、式場の中の灯りを落とし、厳粛な雰囲気の中で行われる、神式の葬儀の中でも最も重要なものです。 - 葬場祭(そうじょうさい):
翌日に行われる告別式に相当する儀式です。参列者は玉串奉奠を行い、故人と最後のお別れをします。 - 火葬祭:
火葬の前に宮司によるお祓いや祭詞奏上が行われます。 - 埋葬祭(まいそうさい):
お骨をお墓に納める際に行われる儀式です。火葬当日に行われる場合もあれば、後日に改めて行われることもあります。
神式のマナーと作法
神式の葬儀の独特な参列マナーについて解説いたします。
- 一般的な喪服の着用:
神式の葬儀でも、参列の服装マナーは一般的な喪服で構いません。男女ともに、ブラックフォーマルを着用します。 - 数珠は不要:
数珠は仏教の法具なので、神式の葬儀では不要です。 - 香典は「御神前」など:
葬儀には香典を持参しますが、神道では「お香」を用いないため、表書きに「香典」とは書きません。
神式の場合は「御神前」「御榊料」「御玉串料」などと書きましょう。
終わりに
神道の葬儀は、自然や祖霊を大切にする日本古来の考え方が色濃く反映されています。 普段馴染みがないかもしれませんが、作法やマナーをわきまえた上で、心を込めて故人を見送りたいものです。
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